多分長い両片想いだった、

「やめ…っやめようよプロイセン君…!だめ、」
「何が、嫌なんら?言ってみよろ、ろしあ……ん、具体的にな」
「…っ」

 現在ロシアは犯されている。目の前の、プロイセンにだ。ロシアはこんな事、望んではいなかった。…いや、果たして本当にそうだっただろうか。少なくともロシアはプロイセンに対して好意を抱いていた。それも、友愛ではなく情愛だ。だから、このような事を望んでいなかった、とは言い切れない。

「こんな事やめようよぉ……っ」
「嫌な理由を、…っは、ン…、言ってみろって言ってんらろうが…っ」

 目の前でプロイセンは自身の尻の穴に指を咥え込み、尚且つロシアの股間のそそり立ったそれを舌で舐っている。その光景は艶やかで、扇情的だ。見ているだけで、くらくらしてきそうな程腰にクる。

「お前が俺を見る目、いやらしい目つきだったぜ?ずっとこういう事したかったんだろ?」
「僕、君をそんなつもりで見てたんじゃないよ…っ」
「嘘つけ。まぁ俺もずっとこういう事お前としたかったしな。お互い様だ」
「だからっ、僕の話聞いてよぉ…!」

 ロシアは昔から巻き込まれ体質で、他人に翻弄されるのが嫌だった。だから、近頃は自身を強く持ち他人にどうこうされないようにしていたつもりだったが、まさか今になってこのプロイセンにこういう形で巻き込まれるとは思わなかった。

「挿れるぞ…っ」
「ま、待って待って!だ、め…っんンっ」
「駄目だったら勃たないだろ?」
「やだって言って…っ、」

 力ではロシアの方が上だ。それでもどうして今日に至っては抗えないのかと言えば、完全に四肢を固定されているのである。目が覚めたら両腕両足に拘束具がつけられていた。
 そもそもこの状態になる以前の記憶はと言えば、プロイセンと話していた記憶がない。だから、全く状況が掴めないでいた。此処は何処だろう、と思ったが部屋の装飾を見るに、ドイツである事は間違いない。ドイツ国内であれば、そのドイツ本人の国内でこんな事をしていたらバレていそうなものだ。現状の強い違和感にロシアは状況を掴めずにいると、唾液で濡れた自身のそれを、プロイセンは彼自身の慣らした秘所へと宛てがい腰を落としていく。

「…は…っぁ、」

 ロシアは確かにプロイセンの事が好きではあったが、告白した事だってない。嫌われている身としては友達になろうとするのが精一杯だった。なのに、ある日突然……これだ。ある意味、事件だ。

「ん……っ狭くて痛いよぉ…っ」
「マジか……充分濡らして慣らしたつもりなんだけどな……やっぱりロシアのでけぇのな。まぁ……期待した通りだ」

 やっぱり?期待した通り?
 ロシアの中で疑問が浮かぶ。先程、プロイセンも言っていたが、プロイセンはこういう事がしたかったらしい。プロイセンが。ロシアと。嬉しくないはずはない。だが、違うのだ。ロシアにとってプロイセンはそんなイメージではなかった。
 普段の行動から見るに可憐な少女の心だとかそういうものを想像していたわけではないが、ロシアの中でプロイセンは色恋沙汰とは程遠いものと感じていたのだ。勿論ロシアもプロイセンも男性であるから、女性に比べて性欲というものが強い事もロシア自身分かっていたが、そもそもそのロシア自身が恋心を抱いてはいても性欲に直接は結びつかない考えだったので、プロイセンに対しても当然そのように思っていたのだ。
 まさか、ある日突然逆レイプされる日が来るとは思ってもいなかった。


「ぷ…ろいせん君、初めてじゃないの?こういう事」
「ん…っく、どういう事?」
「どういう事って…!」
「咥え込むのは初めてじゃないぜ。お前より小せぇけどな」
「…っ!」

 挿れられているのはプロイセンの方だと言うのに、余裕があるのは経験の差なのだろうか。ロシアは酷く悲しくなった。経験の差の優劣についてではなく、プロイセンは何度も誰かとこういう行為をした事があるという事実についてだ。誰とも、こんな行為はした事がないと思っていたし、誰かと結んで欲しいとは思わなかった。

「……っ、そういうお前は、初めてか、ロシア?」
「…はじ、めてだよ…誰かとこういう事するの……!」
「――……そっか」

 一瞬間の空いたその言葉と共に微笑したその表情が嬉しそうに見え、ロシアは動揺する。
 自分はプロイセンの初めてを貰えなかった。しかし、プロイセンはロシアの初めてを貰っているのである。単純に羨ましくてずるいと思ってしまった。プロイセンにとっての初めてが、自分であればよかったのに、と。例えそんなつもりで見てたわけではないと言っても、誰かに奪われるよりはよっぽどいい。
 それでも本音はプロイセンは禁欲的な人だという意識。結果は思い込みのようだが。

「ずるいよ……僕だってプロイセン君の初めては僕自身が良かった…」
「何言ってんだ、こんなもんいきなり挿れられたら痛くて俺が死ぬっつーの」
「だからってプロイセン君が誰かとこういう事してたって思うと堪らなく嫌なんだもの。しょうがないでしょ」

 その言葉を聞いて、プロイセンの表情が僅かに陰る。

「……なぁロシア、もう一回聞く。俺とこういう事するのは、嫌か?」
「…………っ」

 即答出来ずにいると、プロイセンは僅かに腰を揺らした。

「……っ動かないで…!」
「だったらとっとと答えろよ。嫌か?俺とこういう事するの。お前にとって俺は結局友達ってやつなのか」
「…ちが…っ僕、プロイセン君の事好きだよ!好きなの……!」

 友達としていられるだけでもきっと幸せなのだと思っていた。でももしも、プロイセンがそれ以上を望んでも良いと言ってくれるのであれば。

「友として?」
「違う……僕は、君に恋をしてる…そういう、好き…だよ」
「でもこういう事するのは望んじゃいねぇ、と?俺がどれだけ待ったと思ってんだ何年もそういう目で見てるくせに」

 何年も?彼は何年前からロシア自身の感情に気づいていたというのだろう。ロシア自身、気づいたのはつい数年前の事だった。プロイセンはロシアが気づく前からそういう事に気づいていたというのだろうか。
 それとも。

「だ、だからそういうつもりで見てたわけじゃ……」
「恋情なのに情欲ではない、と?俺はお前の為のお飾りになるつもりはねぇぜ」

 プロイセンの言葉を、整理すれば行き着くだろうに、ロシアはその答えに辿りつけない。

「…っん、」
「動かないでよ…痛いって、ば…」
「んだよ、……やりづれぇな。お前がやる気あれば、動いて貰うのによぉ」

 面白くなさそうにそんな事を言うものだから、ロシアはムッとして口をついて嫌味を吐く。

「プロイセン君は僕が初めてで嬉しいの?嬉しくないの?どっちなの!?」
「好きな奴が初めてで嬉しくないはずねぇだろうが。何言ってんだよ、お前」
「……っ」

 好きな奴、と言われて鼓動が大きくはねる。

「…プロイセン君、僕の事…好き、なの?」

 改めてそう問えば、

「…………まぁ、嫌いじゃないな」

 プロイセンは先程の言葉とは打って変わって回りくどい言葉を吐く。

「好きでもなく嫌いでもないそういう相手とこういう行為するの?失望するよ」
「だ、誰もそうとは言ってねぇだろ!」
「じゃあどういう意味なの?教えてよ」

 いいだけ意地悪言われたのだ、そろそろロシアはプロイセンに対してやり返したいところだった。翻弄されてばかりは嫌だったから。

「……まぁ、ロシアも正直に言ってくれたしな……」
「……何を?」
「いや、まぁ…俺は別にお前のことが本気で嫌いなわけじゃなくて…その、」

 困った表情をし始めたプロイセンに、どこか優越を感じる。自分が優位に立てたという意識で、思わず嬉しくなった。

「好きなの?嫌いなの?どっちなの?」

 追い打ちを掛けるようにそう問えば、プロイセンは口を開く。

「お前の為に後ろを開発するくらいには好きだ」

 言われた言葉に、今度は再びロシアがプロイセンに翻弄される番だった。頭の中が真っ白になる。

「……え?」
「…なんだよ。……二度と言わねぇぞ」
「いや、聞こえたけど……」

 後ろ?開発??
 そもそもロシアはそれほど卑猥な言葉を知っているわけではない。何も知らなく純粋というわけではないが、いきなり言われて何の事を言われているのかが分からない程度には、やはり直接的には結びつかなかった。

「……ねぇ、後ろってもしかして後ろのあ、んぐっ」

 言いかけた言葉を彼に塞がれてしまい音にならなくなる。しっかと閉まってしまった紅い瞳の代わりに、銀の睫毛が震える。それがロシアの、初めてのプロイセンとのキスだった。ロシアが黙ったのをいい事に、プロイセンはロシアの唇を割って舌を差し入れてくる。普段のプロイセンの行動のようにどこか粗野で雑で、挨拶以外の舌を入れるキスをした事がないロシアでも上手とは思えないキスだった。
 ただ、キスの合間に隙があるので完全に塞がれてた時よりは声を紡げる。

「……後ろの穴?」
「っ!」

 問えば、びくりと肩を跳ねかせた後、徐に彼の左手が右頬に触れた。その瞬間に頬に痛みが走る。

「…っいひゃッ!」
「それ以上言うな…っ次言ったらお前のちんちん俺の中でへし折るぞ!」

 唇を解放されたかと思えばそんな言葉を突きつけられ、それでもロシアは屈しなかった。

「で、でもプロイセン君初めてじゃないって言ってたじゃない!そんな淫乱な人だったなんて、信じられない…!」
「い、いん……っ!?」

 ロシアは、プロイセンが誰かとこんな行為をしているのだと思うと堪らなかった。侵されてはいけないものにも近い認識だったかもしれない。
 絶句したプロイセンはブルブルと唇を震わせた後吹っ切れたようにロシアへと言葉で噛み付く。

「…っんだよ!自慰行為くらい誰だってするだろ!?お前はしねぇのかよ!」
「しなくはないけど…っ自分でするのと誰かとするのとは違うでしょ!?」
「誰かって誰だよ!?」

 それでも噛み付いてくるプロイセンに、ロシアも言い返す。

「誰かってプロイセン君が言ったんでしょ!僕が知るわけないでしょ!!」
「お前以外の誰と俺がするって言うんだよ!どんだけ俺がお前の事好きで居たと思って、……っ」

 しまった、とばかりにプロイセンは自分の口を噤む。なんだって?とロシアはプロイセンの言葉を繰り返し脳内で再生した。

「……プロイセン君」
「な……んだよ?」
「拘束具、取ってくれないかな……」

 自身が思っていたよりもかなり低い声で言っていたらしい、プロイセンの顔の赤みが引いていく。本当はプロイセンに言う事を聞いて貰う為にわざと声を低めにしたのだが、慌ててロシアは訂正する。

「あ、違うよ。怒ってるわけじゃないから」
「…………じゃ、じゃあ外してやる気は、」
「僕、プロイセン君の事好きだよ」
「っ……なんだよ、絆されねーぜ?」

 動揺しているプロイセンに、ロシアは問い掛ける。

「プロイセン君も僕の事好きなんでしょ?」
「べ、別に好きってわけじゃ……、…あるけど」

 不意に目を逸らして肯定する。ロシアは正直ではないが、プロイセンも大概だ。

「ねぇ――――両想いだね?」
「……っ!」

 どうにか上手く言葉を選び取って、プロイセンの事実を聞き出したい。しかも的確でないと行為を続ける事も出来ない。
 この時点で、ロシアがプロイセンとの性行為を止めたいとは思わなくなっていた。

「……僕は誰かとするのは初めてだけど、君は誰かとした事あるの?さっき初めてじゃないって言ったけど、それは嘘?もし嘘じゃないなら、僕は嫌で嫌で仕方がないよ」

 だって、好きな人が自分以外と行為をして愉しんでいたらと思うと、ショックじゃない?とロシアはそう思う。プロイセンは僅かに目を泳がせたが、ロシアの目を見つめ直すとおずおずと答えた。

「……誰か、と…するのは初めてだ」
「――……そう、良かったぁ」

 思わず安堵しそう告げると、プロイセンは不思議そうな表情でこちらを見た。

「なんでそんな顔してるの」
「……いや、手慣れた俺様が幼気なロシアを手篭めにするのを空想してたのに、」
「『イタイケ』って……そんな純粋でもないよ?僕」

 呆れてしまう。

「何言ってんだ、どう考えてもそういう目で見てたのに襲って来ないどころか告白もして来ねぇし!お前絶対こういう事するの嫌いじゃないだろうと思ってたのに!嫌がりやがって!」
「違うよぉ…プロイセン君がもし淫乱な子だと思ったら凄く嫌だっただけだよぅ……」
「なんで!お前は!俺を襲わない!」

 言ってて羞恥心が増してきたのか真っ赤な顔で詰め寄ったプロイセンに、ロシアは僅かに上目遣いで問い掛ける。

「今から襲ってあげるから拘束具外してよ……ね?」
「う…」
「ねぇ、許して?ダメ?」
「だ、ダメじゃ…ねぇ、よっ」

 俯いて、どん、とロシアの胸板に頭突きする。その行動がよく分からないけれど、プロイセンの照れ隠しなのだろうと認識すると、ロシアは口を開いた。

「……でもよくわかんないけどちょっと痛いし一回抜いて拘束具外したらちゃんと濡らそうよ。手伝ってあげるから」
「……ん!?」

 プロイセンはがばっと顔をあげる。

「唾液じゃすぐ乾いちゃうから、ローション塗ろう?」
「……!」

 と、ロシア自身躊躇う行為中に関する話題をすると、プロイセンは物凄い勢いで縦に首を振った。期待されている。思わずロシアが笑い声を上げると、プロイセンはキョトンとした表情を浮かべた。

「な、なんだよ…!」
「いや、本当に僕と、したかったんだな…って、思って…ふふ、」
「だぁから!そうだって言ってんだろ!何度も言わせんな恥ずかしい!」
「ごめ…ふふ、あははは…っ」

 自分に対して期待していたり、自分の言葉に対して恥ずかしがったり、プロイセン自身の告げる言葉で恥ずかしがったりしているのを見るだけで、可愛いとか思うのは惚れた弱みだろうか。

「……許して、ごめんね?」
「許してやるから…は、早く仕切り直せよ…っ」

 でも、もしもそうなら。

「じゃあまずはプロイセン君が一旦抜いて拘束具を取ってからだね。早くして〜」
「…っ今!外す!って、イテテテテッ」
「あぁほら、乾いてるから抜くだけでも痛いよぉ〜……」

 それはお互い様かもしれない。

PIXIVに掲載した露普小説です。
短いですが、露普をもっとたくさん読みたくて、
自分も少しでも作品投稿しよう、と思ったので、
短いながらも投稿しました。

2015/9/15アップ