過去があるから今の私達があり未来へと続いていくのでしょう

「イヴァン」
「なぁに?」

 キョトンとした表情を浮かべるイヴァンは、少し嬉しそうだった。ギルベルトは、イヴァンの自分に対する目を知っている。知っている…というのは、難しい事を察したわけではない。単に、昔、そういう行為をした事があるからだ。プロイセンはロシアに抱かれた事がある。しかも、一度きりではなく、何度も。
 全ては時間の流れによるもので、もう数十年そんな関係にはない。ただ、過去にあった事は事実である。
 それから暫くは会う事はがかった。偶に、電話で仕事の話をする事はあったが、プライベートの話など殆どなかった。それが何故今、ロシアの地を踏んでまでギルベルトがイヴァンと顔をあわせているのかと言うと…こちらの腹は既に括っていたからだった。

「今日…泊まっていってもいいよな?」
「え?やだなー、日帰りだなんて思ってないよ?ちゃんと君のために客間も綺麗にしておいたんだから。泊まって行ってよ」
「…おう」

 かつて宗主国と属国としての関係で居たあの頃。ギルベルトはイヴァンの事が嫌いで仕方がなかった。憎悪にも似ていた。いや、似ているのではなく確かに憎悪だったのかもしれない。壁がなくなり、東西の再統一。イヴァンはギルベルトを引き止めなかった。ソビエト解体後も、イヴァンの周りからはかなりの国が離れた。イヴァンはその誰をも追わずにそれを見送った。
 自分だけならともかく、イヴァンは誰をも必要としなかったのだ。あんなに、彼は他人を傍に置きたがるのに。それをギルベルトは知っていた。もしも、イヴァンがその他の者を引き止めたなら、自分の事はただの性欲処理だと割り切ったと思うし、ただ『近くにいたから』、『便利だったから』、と割り切れたような気がする。あくまでもしもの話だ。
 だが、イヴァンが寂しがりであるのにも関わらず誰をも求めなかった事に違和感を感じ、もしもあの中で誰か一人を選ぶとしたら、誰を選ぶのだろう…なんて事を想像してしまった。
恐らく、自分が選ばれたらいいと思ってしまった時から、自分の気持ちに自制が効かなくなったのだ。
 それなのに現実は、イヴァンは周囲との交流はあるようで、自分だけが除け者にされているようで、余計に腹が立ってきて……つまりは八つ当たりのようなものなのだが。とにかく。自分だけがイヴァンに優遇されたらいいだとか、自分がイヴァンを欲しいと思ってしまったのだから、仕方がない。諦めるしかない。その気持ちを諦めるのではない。自分の感情に抗うことを諦めたのだ。
 数十年悩んだ。これでも悩んだ方だ。それでも全くこちらを気にしない様子に苛立つのだから仕方がない。向こうがその気なら、こっちから動かなければ何も始まらないと。

「お腹すいたでしょ?今から作るよ。作るから待っててね」
「ん…手伝ってやるよ」
「え〜?いいよ〜だってギルベルト君お客さんだもの」
「んだよ、俺様の手料理が食えねぇってか」
「そんな事はないけど…」

 絶対に言う。
 お前の事が好きだって。

「全部芋料理にしてやる」
「もう、やると思ったけど…やめてよ〜」

 絶対落とす。
 『僕もギルベルト君が好きだった』って。

「俺達の国じゃ『芋料理が出来ねぇとお嫁にいけない』って言葉があるくらい芋料理は重要な役割なんだよ」

 …言わせてやる。

「………ギルベルト君、誰かのお嫁さんになりたいの?」
「は?」

 イヴァンの問い掛けに間の抜けた声を出してしまった。そういう意味で告げたのではないのだが、言われてみればそうとも取れる。ギルベルトは少し言う言葉を考えてから、口を開く。

「…なってやってもいいんじゃねぇ?」

 主夫。うん。今となんらやることは変わらないと思う。

「家で朝飯作って、洗濯物回して…終わった洗濯物アイロン掛けて。洗濯物掛けて、部屋の掃除し始めて…昼飯作って、食べて。まぁ昼はだらだら過ごして、夕方になったら晩飯の材料買いに行って、帰ってきて晩飯作って、晩飯食って日記書いて……まぁ、どうせ今と何も変わらねーよ」

 冷蔵庫から適当に野菜を取り出しながら、ギルベルトは言った。

「それじゃあもう実質ルートヴィッヒ君のお嫁さんじゃない」
「ケセセ、専属の主夫ではあるな!」

 あれ、と思いつく。でもこの話題って、凄くチャンスなんじゃないか?と。
 イヴァンがどういう表情で居るかよく見ておけばよかった。冷蔵庫の中なんて見てる場合じゃなかったぞ…と慌ててギルベルトは野菜をテーブルに仮置いてイヴァンの方へと向くと、穏やかに笑みを浮かべている表情を目の当たりにする。
 全然…読めない。いや、寧ろ何も考えてないのかもしれない。

「あー…その、なんだ」
「何?どうかしたの?」
「俺様が誰かの嫁…に、…なったら。…どう思う?」

 国であり性別上の事を考えると『嫁』なんて言葉はただの例えだが、恋愛感情の駆け引きに出すのは便利な言葉だとは思う。

「何が?どういう意味?恋人でも居るの?」
「〜〜〜〜〜っ」

 本当に裏はなさそうだ。悔しい。これは悔しいぞ。
 自分がイヴァンの嫁になりたいとか馬鹿げた事は考えてない。そうじゃない。そうじゃないんだ。

「君は特別な人なんか作らないと思ってたんだけどね」
「―――………」

 イヴァンは包丁とまな板を出して野菜を水で洗い始めた。
 その台詞は、ギルベルト自身が孤立しているように見えると言う意味か。

「………………っつーか、恋人…みたいな奴が出来たら、…どう思うのかって聞きたかったんだが」
「みたいな奴っていうか、それって君が言いたいのは『大切な人』って意味でしょ?既にルートヴィッヒ君が居るじゃない?別にどうとも思わないよ」

 孤立しているように見える、というわけではないようだ。つまりは、恋人を作るような奴だとは思われてない、という事になる。

「…弟以外では?」
「別に…しつこいね、どうとも思わないよ。だって、君が誰と交流を持とうと、亡国である君は僕に影響なんてないでしょ?」
「………っ」

 亡国。
 言いたい事はなんとなく分かる。イヴァンが言うのは、政治的な意味だ。だが。

「……………なぁ」
「…何?」

 今はもう国家としては存在しておらず政治的な意味が含んでないからこそ、今、ギルベルト自身は感情を認められるのだ。

「亡国が本当にお前に影響がないか、試させてくれ」

 ギルベルトはイヴァンの目を見つめて、口を開く。

「…お前の事が好きだぜ、イヴァン」
「――……、」

 今日はこれを言う為に、来たのだ。躊躇う事は殆どなかった。

「それで……お前んとこに居た時の俺って、お前の一体なんだったわけ?」
「何…って…そもそもギルベルト君、僕の事嫌いでしょ?」
「今はそれほど嫌いじゃねーよ。前は嫌いだったけどな」

 戸惑う表情を浮かべるイヴァンに、ギルベルトは少し期待した。執着を見せてくれ、と。壁崩壊以降のイヴァンではなく、壁崩壊前のイヴァンのように。だからと言って、奴隷のように扱われたいわけではない。ただ、あの時のイヴァンがギルベルト自身を必要としていたなら、恐らくは。

「………僕に取り行って、君から奪った州を取り戻して本格的に独立運動でも起こすつもり?存続する国に戻りたいの?それでもいいよ、欲しいなら欲しいって言ってよ。あの州はそれを望む声も多いし、君が望むならいつでも返すよ」
「っ!」

 政治的な意味は何もない。国だとかそんなのは今は置き去りにして欲しいのに、亡国ではなく存続する国としては意識が既に違うのかもしれない。イヴァンを利用して、もう一度国に?そんな事は考えてない。
 それよりも、ギルベルトから奪ったものをイヴァンが返すという事はもう必要がないという意味だ。
 理由は、ギルベルトへの想いなどないという事?

「………要らねぇよ」

 イヴァンの答えは、充分に理解出来た。
 ギルベルトに対しての執着は、なかったと。いや、あったとしても、今はないと。ただのその場しのぎのおもちゃのようなものだった、と。

「あー………飯、作ったら帰る」

 作ると言った手前それを破るのは嫌なので、それだけ律儀に守る。流石に、今の気持ちを引きずったままイヴァンの家に泊まるのは辛すぎる。

「…ねぇ」
「おっと!芋料理ばっかりは嫌なんだっけ?まぁ冷蔵庫見る限り芋殆どねぇから全部芋料理は無理だなー仕方がねぇなー」
「ねぇ、ギルベルト君…」

 呼ばれた掛け声を無視して違う話にすり替えようとしたが、イヴァンはそれを許さないように名前を呼ぶ。

「僕の事好きって、本気で言ったの?」
「っ」

 終わらせた話と思ったのに、話は巻き戻る。もうやめてくれ、とギルベルトは思う。自分に好意はなかったと理解したのに、自分の気持ちをこれ以上さらけ出すのは辛すぎる。

「あー、だったら良かったか?っつーか、もうそんなんどうでも良くねぇ?」

 上手くごまかせているだろうか。
 用意されている包丁とまな板を前に野菜を置いて、それらを切り始める。

「…多分、それ…どうでも良くない…」

 小さい声で、イヴァンがそう漏らす。彼はすぐ隣りにいるのだ。聞こえないはずはなかった。
 ギルベルトはイヴァンの言葉を聞こえないふりした。一方的に傷つくとわかっているなら、もうこの話は終わりにした方がいい。

「僕の事ホントに好きだって言ってくれるなら、君から奪ったものを、返してあげたい…」
「っ?」

 ギルベルトは東ドイツとしてイヴァンの許に居た時のように、子供のような執着を見せつければいいのに、と思った。
 だけれど。

「じゃないと…君が消えた時の事を考えると、嫌なんだ。好きだって言ってくれるのに、君は既に亡国だから…いつ消えたって、おかしくないから…っ」

 思わず手を止めてイヴァンの顔を見れば、イヴァンは今にも泣きそうな表情を浮かべていた。

「消えちゃうギルベルト君なんか、嫌いだよ…僕は、僕の傍にいてくれるギルベルト君が欲しいの!」
「…っ、な………無茶言うなよ……!」
「だって…っ嫌なんだもん…!好きなギルベルト君が消えちゃうのも嫌だし、消えちゃうってわかってるギルベルト君をこれから好きで居るの…っ」

 その台詞をすぐに理解する事が出来ずに居たら。

「……は…?」
「絶対に、辛いよぅ…っひっく」

 ついには泣きだしてしまった。

「えー…と、」

 こんな奴だっただろうか。
 宗主国と属国として生活していた時は、自分が何をやっても相手が何をしていようと周りに何をされても「傷ついてません」という顔をしていた。

「………、お前…俺様の事、好きなのか?」

 もっと安易に考えていた。
 こっちが好きだと言えば、すんなり好きって答えてくれるとか…そのままあの頃みたいにがっつかれるとか。もしくは…もしもこの好意を一度断るとしたら、いや、考えてなんていなかった。だってこちらは、絶対に好きだと言わせるつもりだったから。

「……っ今の、ギルベルト君は嫌い…っ」
「……………なんだよ、お前あの頃の俺は好きだったって事か?まぁ俺はあの頃も今も小鳥のようにかっこいいけどな。でもあの頃の俺はお前の事が大嫌いだ」
「っ…」

 あぁ、図星だったみたいだ。ギルベルトは確信した。あの頃から、イヴァンはギルベルトの事が好きだったのだと。それを指摘して、当時の気持ちを突きつければ、イヴァンは傷ついた顔をした。今の自分はイヴァンの事が好きだというのに、わざと傷つけるような事を言った。酷いものだと思う。

「…と、思ったんだけどな」

 そう付け足せば、イヴァンは僅かに首を傾けた。

「正直俺様にもよくわからねぇ」

 イヴァンがギルベルトに対して行った行為は、確かに憎悪に似た気持ちを抱いていた。でも、憎悪に近いものだったからこそ、感情のベクトルが逆を向いた時、深い感情を抱いているのではないだろうか。

「……でも確実に言える事があるとすれば…、その…なんだ。今はお前の事は嫌いじゃねぇ。嫌いじゃ、ないんだ」
「っ…ギル、ベルト君…」
「お前は…っ、俺はお前がよく分かんねぇんだよ!俺たち兄弟の統一についても、お前の家族についても……あの時期のお前はお前らしく感じなかった」

 イヴァンなら迷うことなく欲しいものを奪おうとするのではないだろうか。そう、思っていた。でも、そうじゃなかった。

「…僕らしいって、どういう事?」
「……知るかよ」
「じゃあなんで、僕らしくないって思ったの?」

 そんな事、イヴァン自身でも気づいているんじゃないだろうか。

「…寂しがりだろ、お前」

 そう指摘すれば、僅かにイヴァンは目を見開いた。

「………」
「なんであの時…俺じゃなくても、家族には手を伸ばすもんだと思ってた。バルトの奴とか、お前の近くには様々な『役割』の国がいたはずだ。その中に、誰かひとりくらい、頼れる奴はいたんじゃねぇの?」

 イヴァンは、ギルベルトとは違う。昔から戦争屋で周囲の国から敬遠される存在とは違う。今でこそ自分にも弟はいるが、イヴァンにだって昔から家族がいた。それなのに。

「………いなかったよ」

 ぽつりと呟かれた言葉。ただしそれは、辛そうな音は秘めていない。イヴァンを見つめれば、穏やかに微笑っていた。少しばかり、寂しそうな笑み。

「ねぇ、一番手を伸ばしたかったのは…当時、一番欲しかったのは…ギルベルト君だよ」

 そう告げて、イヴァンはギルベルトの髪を撫でる。ただそれだけの事なのに、あの時代では有り得ない程に頬が熱くなった。

「……好きだった。ずっとむかしから好きだった。君に酷い事をしたのも、どうしても僕の言う事を訊かせたかった。服従させたかった。僕だけのものにしたかった」
「…っ」

 告げられた告白。
 あの閉鎖された空間。他のものを寄せ付けなかった関係。あの関係は、イヴァンにとって何を意味していたのだろうか。ただ、当時のギルベルトはイヴァンの事が大嫌いで、憎悪を抱いていて、ただ弟を庇うために…手を出させない為に虐げられた。
 イヴァンは最初からルートヴィッヒに手を出し害を与えようとしたかったのではない。ギルベルトに手を出す口実が欲しかっただけだった。

「ねぇ」
「………」
「そんな事を言えば、君は僕のものになってくれた?」

 問いかけられた言葉。これは、イヴァンは知っていたのだろう。

「…ねぇ、無理な話だったでしょ?」

 気づいていた。
 どう足掻いても、あの時のギルベルトはイヴァンの事を好きではなかったから、こんな言葉を告げたとしても許されるものではない。寧ろ、反発し、逃げてしまうかもしれない。今のように、ギルベルトがイヴァンを好きにならなかったかもしれない。

「………イヴァン」
「うん、何?」
「……反論の余地もねぇ」
「……やっぱりね」

 呆れた表情でイヴァンが頷く。それでも、だったら今のギルベルトの気持ちはどうなるんだ、と。

「……俺は消えない」
「約束出来る事じゃないでしょ」
「……お前が、あの土地を預かるうちは、絶対に消えない」

 もしも…もしもイヴァンの地にある元ギルベルトの領土が独立してしまったら、恐らくギルベルトは現役に戻るのだろう。でもそれは、ギルベルトが国として動くということは、国としての自立は出来るかもしれないが。

「…お前があの土地を守る限りは、俺はお前の一部で居続けられるんだろ?お前にもしもの時があったら、もしかしたら役に立つかもしれねぇじゃねーか」
「ふふ、でも残念な事に君の土地の住民は僕から離れたがってるみたいだけどね」

 そんな現実を突きつけるイヴァンに嘘はないのだろう。ギルベルトが何をどうしたところで、もうあの土地はギルベルトのものではない。今からイヴァンに何かしたところで、その住民の感情や意向が変わるような影響は与えられないだろう。

「今の俺はもしもお前の身に何かあった時、直接お前を守ったりとか援護したりとかそういうのは出来ないと思う。ただ、お前のところにあの州があるかぎりは…俺の代わりになってくれるんじゃねぇのかなって…思う」
「本当かなぁ?」

 クスクスと笑うイヴァンに、ギルベルトは告げる。

「お守りだと思えって。アレを」
「……うん」

 今は国としてではなく呑気に生きながらえているけれど。だからこそ、気持ちの整理もついたのだと思う。
 ギルベルトは問う。

「今の俺は、嫌いか?」

 改めてそう問い掛ければ、イヴァンははにかんで答えた。

「ううん、今も変わらず…君の事が好き」

 その言葉を聞いてから、心の中でガッツポーズを決めて勝利宣言を行った。

「じゃあさっきのあの言葉は嘘じゃねぇかよ。なんだよ今の俺は嫌いって」
「……だって、心配なんだもん。不安なんだもん…、嫌なんだもん…」

 子供のように唇を尖らせるイヴァンに、少しの背伸びをして唇にキスをする。触れるだけのキスだった。少し驚いたようだが、元々他人と挨拶でキスが出来る男だからか、動揺は大きくはなかったようだ。話を始めれば、イヴァンは頷く。

「……あの時よぉ、」
「…うん?」
「辛かったろ?」
「………うん」

 家から、一緒に暮らしていた国がばらばらに離れて、ただでさえ寂しがりのイヴァンは、かなり精神的に堪えたのではないだろうか。

「…甘えていいぜ?昔甘えられなかった分、俺様が今甘やかしてやる」

 そう言って、わしゃわしゃとイヴァンの頭を乱暴に撫でるとイヴァンは真っ赤な顔で恥ずかしそうにこちらを見つめた。

「ギルベルト君のそういう上から目線は好きじゃないなあ」
「は?なんでだよ」
「だって、守ってあげたいじゃない。僕の方が強者だと思うし、それって当然の気持ちだと思うよ?」
「何言ってんだ、関係ねーよ。甘えたなお前は、遠慮無く俺様に甘えればいいんだぜ?」

 ケセセと笑えば、イヴァンも釣られて微笑む。
 ギルベルトは笑みを不意に消して、肩口に頭を預けた。初心な関係ではない。気持ちについての話ではなく、二人は過去に互いの身体の温度を知っている仲だ。ギルベルトは当初の目的は達成されたものの、受け入れられた事で過去の熱を今のものにしたくなってきていた。

「……なぁ」
「…なぁに?」
「しねぇ?」
「っえ…っ?」

 ギルベルトが耳元へ向けて率直に問えば、なんだこの初心な反応。お前は俺を抱いた事あるくせに、何をすっとぼけた態度でいるんだと、言ったこちらが恥ずかしくなる。いや、確かに先に告げたギルベルトの方が羞恥心を持つべきなのかもしれないけれど。

「……ぎ、ギルベルト君……っ」
「なんだよ」
「僕、君の事をね、今度大切に…しようと…思ったんだけど……」
「は?まぁ、そうしてくれるのは有難いけどよ…」

 過去の、酷い暴力や性的な行為を思い起こせば、勿論負担を掛けないという意味では有難い。

「だから、すぐに…そうやって…抱くのってどうなのかなぁ…とかって…」
「は?」
「だ、だって…っ君に酷い事したよ?したよね?君いつも痛々しそうにしてたし…怖くないの?あの頃確かに、ちょっと僕、愉しかった部分はあるけど…、でもね、ギルベルト君。僕の事好きって言ってくれたでしょ?消えないで、…ずっと僕の傍にいてくれるんでしょ?だったら…別に、急がなくても、いいかなぁ…って」
「何言ってんだぁ?お前…」

 今イヴァンの本音が見え隠れしてたが…主に過去の行為に本性が混じっていた意味で。そこが問題なわけではなかった。

「嫌じゃなかったら誘わねえし、怖かったら好きだっつーわけねぇだろ。そもそもお前はこの数十年ですっかり枯れたって事か?残念だな、こっちはまだまだ若いんだお前と違ってなぁ?」

 悪そうな笑みを浮かべてイヴァンを挑発する。「え、でも…」とそれでもごねた態度でいるイヴァンを無視して、一度放置していた切った野菜をボウルに入れてラップを掛ける。何事もなく普通の行動を起こしたギルベルトを見て、イヴァンはキョトンとしていた。ギルベルトはそのボウルを冷蔵庫へと仕舞う。

「運動してからの方が飯が美味いだろ」
「…どうしてもって言うなら、食後の運動の方がいいと思うなぁ」
「食う前に運動した方が脂肪が減りやすいんだぜ。あの頃よりどうせお前だって身体動かすこと減ったんだろ?腹の周りとか肥えてんじゃねぇの?」
「ぎ、ギルベルト君もでしょっ?絶対君の方が増えてるよっ」

 ぷくっと頬を膨らませるイヴァンに思わず笑みが溢れる。本当に、子供臭さが何処か抜けない彼に安心している。よく東ドイツであった頃は、ドイツ騎士団として存在して居た時のイヴァンと会ったあの頃を思い浮かべては、どうしてこんな歪んだ関係になっているのかと理解出来ずにいたこともあった。だからか、イヴァンの子供臭いところを見ると、ギルベルトは安心してしまうのだろう。

 促されるままにイヴァンは寝室に案内して、ギルベルトはそこで服を脱ぎ始める。

「本当に…信じられない」
「……何がだよ」
「ギルベルト君が自分からそういう事をするなんて…想像つかなかった」

 言われてみれば肉体関係があった頃は抵抗するか諦めるかのどちらかで、イヴァンを求めることなんてなかった。

「…だから?」
「ちょっと不気味だよね…」
「んだと?ったく、いいんだぜ?俺はお前の事が好きで抱かれてやるって言ってんのに、お前がしたくねぇならよぉ」
「えっ…と、そういう意味でも、ないんだけど…やっぱり、ギルベルト君って悶絶したり苦痛に表情を歪めるところが、堪らなく好きなんだよね」
「………変態じゃねぇか……」

 なんとなく分かってはいたがやっぱりサディストだったか、とギルベルトは心の中でそっと結論づけた。

「そういう君だって変態なんでしょ?あんなに酷い事したのに、また抱かれたいなんて」
「まるで俺がマゾヒストみたいに言うなよ…」
「えっ、違うの?」

 白々しくとぼけた表情で聞いてくるので、上半身だけ脱いだ状態でイヴァンの腕を引っ張る。勿論背はベッドのスプリングに沈んだ。久しぶりに覆いかぶさるイヴァンの身体は重かった。恐らく、あの頃と変わってない。

「………今のお前は、あの頃以上に色々してくれるんだろ?俺様の事可愛がれよ、大事にしろよ、丁寧に扱えよ?」
「う〜ん……」
「なんでそこで首を傾げんだよっ」

 イヴァンがギルベルトを見つめる。

「……大切にはしたいけど、ギルベルト君とまたえっち出来ると思うと、嬉しい気持ち半分…怖い気持ち半分って言うか…」

 イヴァンの事を嫌っていた当時や酷いことをした事が怖いと思っている…のだろう。だけれど、それがどうした、とギルベルトは思う。

「お前の凶暴さ加減ならとっくの昔に知り尽くしたぜ」
「………下世話な話だけど、ギルベルト君僕と離れてから誰かに抱かれたりした?」
「いや、全く」
「……、嬉しい気持ちもあるけど…複雑だなぁ」

 女性だろうが男性だろうが、受け入れる場所は日常的に慣らさないと辛いという事はなんとなく知っている。なんとなくというのも、ギルベルトはそんな相手など目の前にいるイヴァンしかいないので確かめる事は出来なかった。

「っつーかよぉ、イヴァン…」
「………うん」
「今のところ俺の中で暴れていいのは、お前だけなんだけど?」

 ギルベルトは熱のこもった瞳で見上げれば、イヴァンは目を瞬いてから細める。

「……明日、二人でのんびりしよっか」

 クス、と笑うイヴァンのそれは、明日は身体が碌に動かなくなるのを想定した誘い文句だった。

「構わねぇよ。…ほら、早くしろ……っ」

 思いの外小さな声でイヴァンに先を促すと、彼はギルベルトの唇にキスを送る。不器用だ。不器用なキス。あの頃と、何一つ、変わらない。
 薄く唇を開いて、舌を絡める。互いの唾液が絡んで、眼球と瞼の温度差を感じる。自身の顔が火照っているのに気づいた。湿った音と共に、衣服を纏ったままのイヴァンの服を脱がし始める。昔、弟の服を着せ替えたりしていたので、他人の服を脱がせるのは容易かった。イヴァンもキスを受けながら、ギルベルトのボタンを外していく様子を感じながら、外れた後には腕を袖から引き抜いてベッドの下へと落とした。
 薄く開いた瞼から、イヴァンの欲情したライラック色の瞳が見えた。

「……もっとがっつけよ」
「急がなくても君は逃げないでしょ?今日はゆっくり、君を味わいたいなって」

 イヴァンの人差し指が、ギルベルトの唇に触れる。そのまま首をなぞり鎖骨を過ぎ、胸の突起を掠める。その感触に僅かに眉を顰めると、イヴァンは深く笑んだ。

「ギルベルト君って、結構どこでも感じたりするよね?」
「…人をはしたない女みたいに言うな」
「女のコではないけど、昔は結構はしたない感じだったと思うよ?」
「…何処がだ」

 突起をくりくりと掻けば、ギルベルトが身を捩る。イヴァンは耳元に唇を寄せて、耳たぶを食む。

「……うーん、痛いのに感じちゃって真っ赤な顔で涙滲ませて涎垂らしてたりするところとか、ね?」

 そう囁かれた瞬間に、かっと身体が熱くなる。被虐的にされている様子がこいつの好みだというのだろうか。飛んだ変態野郎だ。
 イヴァンの腕が下着の中に差し入れられる。

「…ん…っ」

 キスを受けながら、合間にくぐもった吐息を漏らす。イヴァンの指がギルベルトの陰茎に絡みつき、ゆるゆると上下に扱う。唇が離れ、触れていた手も離れる。イヴァンが自身の指を舐めた。どうせ今日も変わらず、潤滑剤を使うなんてサービス、イヴァンにはないのだろう。その事実にそっと気づくと、ギルベルトはイヴァンの首に腕を回して引き寄せた。

「ん…ギルベルト、くん…っ」

 キスの合間にその名を呼ぶ声。昔は、その声がこんなに甘く聞こえるなんて思ってもみなかった。

「は…ふ、」

 開く唇に互いの漏れる吐息を重ねる。胸と性器に触れられて、先を焦れるのは仕方がなかった。一方的に高ぶるのでは逆に理性も働くもので、ギルベルトも仕返しとばかりに背中のくぼみの背骨を辿って、指先は下半身に向かう。もう片方の手でイヴァンの下衣を脱がせていった。躊躇わず、上へと持ち上がったイヴァンの性器に触れた。徐々に乱れる互いの呼吸。こんな時に、昔の事ばかり思い出すのは良くないと思いつつも、イヴァンの…何処か冷静な行為に物足りなさを抱く。
 既にイヴァンに触れられていたギルベルトの性器は濡れそぼって、先端からだらしなく粘液が零れていた。その液が、イヴァンの手を汚している。過去に、この男は前を弄らずにセックスするだの、今日はイカせないだの、散々やり尽くしてくれたが今のこいつはそうではないらしい。イヴァンも覚えているのだろう、一番ギルベルトが気持ちの良いと感じる力の入れ方で的確に欲を誘導している。でも、今ギルベルトが求めているものがそれかと言われたら、そうではなかった。
 流石にギルベルト自身も自分から疼く後ろを、なんて事は言えない。イヴァンの事を好きだと気づいてから戸惑いながらも自分で慰めた事もある。ギルベルトはイヴァンの性器を扱いながら、もう片方は自身の股間へと手を伸ばした。通常、排泄器官であるそこに指を捩じ込む。第二関節までそれを体内に収めたところで、イヴァンの胸に触れていた指がギルベルトの股間にある手に絡んだ。

「…待ち切れないの?」

 囁くように問い掛けてきたその声に、ギルベルトはぞくりと快感が駆け抜けた。ギルベルトの入っている指と穴の境界にイヴァンが触れた。ちゅ、とリップ音を立てて頬にキスをされる。そして、イヴァンの指が既にギルベルトの入っている指に沿って押し入ってきた。

「…っ、」
「…自分で指入れちゃうって事は、ギルベルト君はココを自分で弄る事があったって事?」

 想像はついている癖に、意地の悪い男だ。

「ギルベルト君の気持ちいいところはソコじゃないでしょ?もうちょっと奥…そう、この辺」
「…っぁ、」

 イヴァンの指はギルベルトにとっての後ろ側。前立腺へと誘導するように、ギルベルトの指を更に奥へと詰めた。

「ここを…もっと強めに、押すの」
「ンっ…!」

 イヴァンの指がギルベルトの指を押して、内壁を圧迫させる。よくもまぁ、自分で触らずとも分かるものだと思う。ギルベルト自身、自分で弄る事はあっても、気持ちの良いポイントをいつも的確に押せるかと言えば、そうではないのに。
 ギルベルトはイヴァンの性器を握る手の力が抜けていく。一人でしているわけではないから、イヴァンを気持よくさせてやろうと思っていたのに。互いに貪りあいたいと思っていたわけで。これでは、一方的に求められていたあの頃のようになってしまう。

「くそ…っ」
「? どうかした?」

 思わず悪態を吐いたのをイヴァンはこの距離で気づかないはずはなかった。問い掛けながらもイヴァンはギルベルトの指を押す。追い詰められるばかりなんて気分が悪かった。

「ちっとも、お前を気持ちよさそうに出来なくて…面白く、ねえ…っ」
「ふふ、そんな事考えてたの?」
「っぁ?」

 イヴァンの指がギルベルトの指を率いて体内から抜ける。しかし、そそり勃つ陰茎の裏筋を擦り上げ、イヴァンは確実にこちらの欲を煽っている。

「っん、く…っ」

 イヴァンの固いなっているそれを指先で触れ緩やかに手を動かすが、的確にイヴァンを気持ちよくさせているとは思えなかった。それでも、中の指が抜けた事で物足りなさを感じる気持ちもあって、自身に腹が立つ。

「ギルベルト君は僕のことを中で気持ちよくしてくれたらいいと思うんだぁ」
「っふ…っ、」

 そう言うと同時に、イヴァンの指が物足りなさを感じていた箇所に侵入した。太い指が内壁を押していく。

「だから、もう少し…中をぐちゃぐちゃに解かして、僕の事受け入れる準備して?」
「っつ、ぁ!」
「前みたいに、きつくて痛いのはヤだよ?」

 その言葉を、ギルベルトはどう捉えていいのか分からなかった。
 気持ちが良くてしていたわけではないという事だろうか。それでも無理やり抱いたのは、ギルベルト自身をイヴァンが欲しかったからだろうか。

「君が痛くて泣くのも嫌」
「ふ…っ、」

 内壁を拡げるように押してから、前立腺を押して欲を煽る。性器は既にどろどろと融けているのに、すぐにイヴァンの熱をくれる様子もないのが、面白くなかった。

「もう…挿れろよっ」
「もうちょっと指増やしてからね?」

 そう告げて、イヴァンの指が、2本、3本と増えていく。内側から圧迫される感覚。内壁はイヴァンの指を締め付ける。

「……もうちょっと、楽にして?」
「早…く!」
「焦らなくてもちゃんとあげるよぅ」

 欲に溺れているのが自分だけみたいで、凄く嫌だった。長く好きでいるのはイヴァンのはずなのに。もっと夢中になればいいのに…そう思うが、イヴァンは陥落しない。

「い…ったくても構わねぇんだよ!お前のだったら、もうなんだってなぁ…っ」
「被虐性欲強くなったの?」
「だから俺はマゾヒストじゃないって言って…っふ、」

 内壁を圧迫していた指が引き抜かれる。力なくイヴァンのものを握っていたギルベルト手も、イヴァンによって解かれた。とんとん、とイヴァンがこれから入る場所の口に先端を宛てる。

「………慣らした方だと思うんだけど、痛かったらごめんね?」
「っ! っく、」
「…っでも、ギルベルト君は痛い方が、好みみたいだけど、ねぇ…っ」

 ぐっとイヴァンの体重がギルベルトに掛けられた。ベッドのスプリングも鳴り響く。指と比べるには全然違う大きさのものが、ギルベルトの中を犯した。イヴァンが顔を顰める。恐らく…いや、考えるまでもなく狭くてきついのだろう。

「い…ってぇよ、馬鹿…っ」
「まだ、ぜんぶ入ってないよ…?」
「ぁ、あ、っうぁ、」

 身体を貫こうとする力に、思わず喘ぐ。しかも、思っていたよりイヴァンのそれはかなり硬くなっていて内壁が抉られるようだった。

「もう要らないとか、言わないよねっ?」
「ぁ、く…そ、言うわけねぇだろ馬鹿野郎…っ」

 罵倒はするけれど突き放す言葉ではないそれに、イヴァンは嬉しそうに目を細めた。そして一気に奥までそれをおさめる。

「は…ぁ、イヴァン…っ」
「なに…?」

 何十年ぶりかに繋がった互いの身体。初めてではないのに、酷く感情が定まらない。
 ギルベルトは間近にあるイヴァンの顔を引き寄せて唇を合わせる。イヴァンも、僅かに目を見開いたがそのままくちづけを受けて、次第に深いキスへと変わった。舌を絡めていると、時折中にあるイヴァンのそれが跳ねる。恐らくは、もうこいつは動きたくて堪らないはずだ。

「…動けよ」
「……うん、じゃあゆっくりね」

 イヴァンによって拓かれた中を、馴染ませるように遠慮がちに腰を動かしてきた。普段は遠慮なんてものを知らないのに、今更何を遠慮するというのか。

「…っ、ん、」
「えへへ、ギルベルト君の中…気持ち、いいなぁっ」
「そう、かよ…っ」

 そりゃ良かったな、と適当に言い返すと、ぱた、と顔に雫が落ちてきた。行為中ならよくある事だが、それはその要因である汗…ではない。顔を上げれば、イヴァンは微笑みながら泣いていた。

「…んだよ、泣き虫だな…」
「だって…、嬉しいんだもん…っ」

 イヴァンの涙を指で拭ってやろうとすると、イヴァンは動きをやめて近づいた指に思わず目を閉じた。涙を払って指が離れる。イヴァンの目がまた開かれると、潤んだ瞳が見つめ返した。

「ギルベルト君…っすき、だいすき…っ」
「はいはい、とっとと動けよ」
「…そういうところはちょっとひどい」
「…………」

 イヴァンは潤んでいた瞳を、上目遣いで見てくる。…あざといな。そう思いながら、ギルベルトは腰を揺らす。体位的に下敷きにされているギルベルトは、余り大きくは動けないが。

「っん…っ、あ、ここ…っ気持ち、い、…っ」

 動かないイヴァンをギルベルトの中で突くように動く。そうやって態と声に出してそんな台詞を口にした。

「…なんてな?」
「……っ」

 冗談めかしてそう言えば、イヴァンは真っ赤になってジト目で見てくる。さっきまでの可愛らしさは何処に行ったんだ。

「っ!あ、…ンッ」

 イヴァンは少し面白くなかったようで、仕返しの代わりに喘がせる事にしたらしい。先ほどまでとは違って無遠慮に、ギルベルトの中を突く。くぐもった声が、自然とギルベルトの口をついて出た。

「…っぁ、あ、ふぁ…っ」
「抵抗なく…喘いでくれるんだね、嬉しい…っ」

 イヴァンに虐げられていた時は、誰が喘ぐかと唇を噛んでいた。そんな事も、イヴァンは覚えていたのか。
 激しくなる抽挿に、イヴァンも物を伝える口数が少なくなっていく。意味のない声が、濡れた音が、ベッドの軋む音が、部屋の中に響いていた。いいだけ痛い思いを受けたこの身体は、どうやら少し乱暴にされる方が気持ちがいいらしい。きつく、強く、抱かれた方が、ギルベルトは好むようだ。

「ぁっ、あ…っ、イヴァン…っも…っと、」
「ギルベルト、くん…っ」
「酷く…して、いい…っ」

 汗が溢れシーツを濡らす。イヴァンは更に腰の動きを早めてその身体を抱いた。
 もっと求められたい。もっと執着されたい。多少歪んでいてもいい。
 なぜなら。

「は…ぁっ、ぁ…もうっ…イ、く…っ」
「っ?」

 相手が、イヴァンだからだ。







「……悪い」
「別に、僕はこんなの怒ってないよ?」

 鏡を見ながらイヴァンは告げた。肩と背中には歯型と爪痕がついている。

「イく度に僕の肩を噛んで堪えようとするのは責めてないよ。でもね、それよりも僕は、腰を両足でホールドされた事の方が吃驚だったなぁ」
「っ」
「女のコじゃないんだから、中に出されたって何も得なんてないと思うんだけど?」
「いや、あれはそういう意味じゃ…っ」

 ギルベルトはイく直前に、イヴァンの腰に足を絡めた。事実だ。でもそれは、イヴァンに中に出されたかったからという意味ではなかった。だからと言って、言い訳は用意しているものの、それを言うには何故だか言い訳の方が羞恥心が過ぎる。
 ベッドの上で気怠そうにゴロゴロしているギルベルトに、イヴァンは問いかけた。

「じゃあどういう意味?」
「そ、それは…、あ、そうだ俺様シャワー入るぜ!…っ……、」

 身体を起こした瞬間に、腰と散々犯された中に違和感を感じて、起こした身体をゆっくりとまたベッドに沈めていく。

「その状態なら後にすれば…って言いたいところだけど、中に出しちゃってるし、入ったほうがいいよ」
「……っ言われなくてもわかってるっつーの……」

 そう文句を言うと、イヴァンはベッドの端に腰を掛けて手の平を差し出す。

「手伝おうか?」
「……どっちの意味でだ?」

 イヴァンの真意を見抜けず問えば、イヴァンは首を傾げた。

「えっ、シャワーまで行くの手伝ってあげようかって意味だったんだけど……あ、そっか…もしかしてギルベルト君は、一緒にシャワーも入って欲しいって甘えたいと思ってくれてるの?」
「〜〜〜ちげぇ!」
「それで、中に出した僕のを掻き出して欲しいって…そういう事?」
「だからちげぇっつってんだろぉがっ!」

 天然で言っているのか、狙って言っているのか…後者だと思いたい。天然だったら、いくら否定しても限りがなさそうだから。

「ねぇ、ギルベルト君…」
「…?なんだよ」
「………また、遊びに来てくれる?」

 こんな行為の後に言う言葉だろうか。
 ギルベルトは呆れたが、鼻で笑って答えてやった。

「お前が『帰って!』って懇願しても、また来てやるぜ」

 だって俺たち、今はもう恋人同士なんだろ。
 そう告げてやれば、

「…うんっ」

 目の前のイヴァンは可愛くて綺麗な笑みで笑い返してくれるのだ。

PIXIVに掲載した一番最初の露普小説です。
2015/9/14アップ